運動経験ゼロ、知識不足ほどパーソナルトレーニングで劇的変化のチャンスが眠っている。

2020.6.12

ダンベルを持ったことがない。自分で筋トレをしたことがない。そんな自分がパーソナルトレーニングを受けても、意味ないんじゃないか…。

「むしろ運動慣れしていないほうが、パーソナルトレーニングで伸びる可能性が大きいですよ」

そう語るのは、福岡・天神のパーソナルトレーニングジム「AX FITNESS」の代表トレーナー・稲田さん。

なぜ稲田さんは、これだけ言い切ることができるのか。その根底には、彼がパーソナルトレーナーとして大切している、身体もメンタルも支える指導スタイルがありました。

(インタビュアー:サトートモロー)

<稲田 淳史(いなだ・あつし)>AX FITNESS代表トレーナー。4歳からサッカーをはじめ、Jリーグ「サガン鳥栖」のユースチームで活躍。その後スポーツジム、海外留学先での運動指導経験を重ねて、トレーナー活動をスタートさせる。

運動初心者ほど、パーソナルトレーニングで伸びる素質を持っている

インタビュアー・トモロー

4歳からサッカーを始めたって、アスリートとしてのキャリアがものすごい長いですね。AX FITNESSさんのお客様も、運動経験者が多いんですか?

稲田トレーナー

いえ、むしろお客様のほとんどが運動初心者の方ですね。

インタビュアー・トモロー

実際に指導するとき、戸惑いや心配はなかったんですか?

稲田トレーナー

それは最初からなかったです。お客様は僕たちのように、ハードな運動はできない。これはトレーナー活動を始めたときから、大前提に考えていました。

インタビュアー・トモロー

(顔も発言もイケメンかっ)指導中はどんなことを意識していますか?

稲田トレーナー

お客様が楽しく運動できて、なりたい身体を手に入れるにはどうすればいいだろう。そう思いながら、自分なりに工夫します。

翌日筋肉痛が辛いようなら、もう少し負荷を調整してみよう。トレーニング中大変そうだけど、負荷を上げたほうが燃える人っぽいなとか(笑)

インタビュアー・トモロー

相手の様子を見ながら、上手にトレーニング内容をコントロールするんですね。

稲田トレーナー

お客様とのトレーニングはとても楽しいんですよ。むしろ、運動に関して素人なお客様のほうが、ボディメイクの素質が高いかもしれません

インタビュアー・トモロー

え、そうなんですか?

稲田トレーナー

どんな習い事も、はじめたての頃はどんどん上達するじゃないですか。トレーニングに関しても、同じことが言えるかもしれません。

部活で筋トレしていたよとか、自分でトレーニングした経験がある人は、その人の「クセ」がついちゃってるんですよね。

ウエイトトレーニングや自体重だけで行うトレーニングも、効果的な動きではなくて「自分の動きやすい動きをしよう」という、無意識のズルが生まれやすいんです。

インタビュアー・トモロー

慣れているがゆえに、トレーニングの効果が減ってしまうんですね。

稲田トレーナー

その点、運動初心者の方は身体の動かし方がわからないかわりに、余計なクセもついてない。しっかり運動のコツや食事を覚えれば、驚くほどの変化を感じられると思います。

「私は運動経験ないから、トレーナーに教わるの不安だな…」と思う人もいるでしょう。むしろそういう方こそ、パーソナルトレーナーを受けてほしいですね。

いちから正しいトレーニングを身につければ、きっと生活が豊かになります。

理論と経験にもとづいた「王道」の指導

インタビュアー・トモロー

実際の運動・食事指導についても聞きたいです。アスリートとしてキャリアの長い稲田さんならではの、トレーニングや食事のコツはありますか?

稲田トレーナー

ごめんなさい、僕の場合そうした「自分だけのトレーニング理論」みたいなものはないですね。

インタビュアー・トモロー

ほう。

稲田トレーナー

僕が大切にしているのは、王道・正統派の身体作りを貫くことですね。

たとえば食事指導だと、最初のカウンセリングのタイミングで、食事や摂取カロリーを自動計算できるアプリをダウンロードしてもらいます。

稲田トレーナー

お客様の運動量、体重、年齢などを考慮して、タンパク質や脂質、糖質をこれくらい食べましょうと、具体的なグラム数を伝えるという感じです。

インタビュアー・トモロー

かなり具体的に指導するんですね。

稲田トレーナー

もちろん、職業や趣味の都合で、理想の栄養バランスをクリア出来ない方もいます。その場合は、なるべくジャンキーな食事を減らしたり、夜の炭水化物を控えたりアドバイスします。

一見シンプルな指導内容なんですが、お客様の気づきはかなり多いです。

食事を記録するようになると「え、私普段からこんなに脂質を摂ってたの?」とか「気づいたらめちゃめちゃお菓子食べてました(笑)」とか、無意識の暴飲暴食に気づきやすくなります。

インタビュアー・トモロー

そういう気づきが、食事内容を変えるきっかけになるんですね。運動指導の正統派・王道はどんな内容ですか?

稲田トレーナー

筋トレのBIG3(ベンチプレス・スクワット・デッドリフト)をはじめ、「必ずこれをやろう」とは決めていません。

カウンセリングとちょっとしたテストで身体のクセや、関節の可動域を見ます。そのうえで、得意な動きを中心にメニューを組むという感じです。

そのなかで意識しているのは、とにかく高負荷・高重量をやらないということ。動作のしかたや手の向き、動くスピードを調整することで、狙った部位をしっかり鍛えることができるんです。

インタビュアー・トモロー

へえ!ちょっとどんなものか体験してみたいです。

稲田トレーナー

わかりました。じゃあダンベルを使った胸のトレーニングをしてみましょう。

インタビュアー・トモロー

うぉぉぉぉぉ…。

よくトレーニングをする人が、胸の筋肉を上部・中部・下部に分割して鍛えると言っていたんですが、言葉では理解できても感覚が分からなかったんです。

このトレーニングで、生まれてはじめて「胸の上部を鍛える」ってことがどんなことかわかりました。

ちなみに、翌日見事に狙った部位が筋肉痛になっていました。トレーナーってすげえ…。

慣れをつくらない。新鮮味を生み出し続けるアプローチ

稲田トレーナー

実際のトレーニングでは、ここにちょっとしたポイントも加えています。簡単に言うと、お客様に「慣れさせない」運動手法です

インタビュアー・トモロー

慣れさせない?

稲田トレーナー

たとえば、お客様に胸のトレーニングをするとします。その方が100kgのバーベルを8回持ち上げられるとして、高負荷のトレーニングだけでなく、30kgの重量でたくさん回数をこなすんです。

単に物理的な重さを変えるだけじゃなく、下ろすスピードをゆっくりするなどの緩急も加えます。

こうすることで、常に新鮮な刺激を筋肉とメンタルに与えられます。

インタビュアー・トモロー

「とにかく高重量!」みたいなトレーニングだけじゃないんですね。

稲田トレーナー

別のジムに通っていたお客様から、「あそこのトレーナー、毎回同じ運動ばかりで楽しくないんだよね」という話を聞いたことがあるんです。

身体作りで欠かせないのは、継続していくこと。そのためには、その日その日で違う刺激を加えて、お客様に飽きを感じさせないことも大切だと思っています。

有酸素運動も、激しいのからゆっくりできるものまで、いろいろバリエーションを加えます。

メンタルの弱さを誰よりも自覚しているから、お客様に寄り添える

インタビュアー・トモロー

継続することは確かに大切だと思います。どんなに頑張って運動しても、たった1日じゃ身体に変化は出ないですもんね…。

稲田トレーナー

そうですね。それにトレーニングの継続は、身体つきだけじゃなくて内面を変える力もあると思います。

AX FITNESSに半年以上通っているお客様にも、日常が豊かになったと語る方が多いです。

インタビュアー・トモロー

具体的なエピソードはありますか?

稲田トレーナー

ある若い女性のお客様ですが、彼女はダイエットに対して、かなり偏った価値観を持っていました。

今もたまに目にする、「ダイエット=食べない」「炭水化物を食べたら太る」という偏った知識です。AX FITNESSでは毎日同じ時間に体重を測ってもらっているんですが、その結果にすぐ一喜一憂していました。

気持ちの浮き沈みが激しいためか、全体的にネガティブな思考になりがちでしたね。

インタビュアー・トモロー

そのお客様とは、どのように接していったんですか?

稲田トレーナー

お客様と会うたびに、身体作りに必要なことを伝え続けました。炭水化物は必要な栄養なんだよとか、このくらいの体重の変動は問題ないよとか。

一度慣れ親しんだ意識を変えるのは、かんたんなことではありません。毎週・毎回会うたびに、何度も大切なメッセージを繰り返す。そうやって、「これで大丈夫なんだ、問題ないんだ」という認識になるまで、話し続けました。

そのおかげか、この半年で体重が10kg落ちただけでなく、普段からの行動も変わってとても明るい性格になりました。

インタビュアー・トモロー

身体の変化だけでなく、メンタルの変化も起こったんですね。なぜ稲田さんは、そこまでお客様によりそえるんですか?

稲田トレーナー

人は弱い生き物だと知っているからじゃないでしょうか。

僕はユース時代から、厳しい練習についていけたし、苦しい筋トレも進んでこなしていました。

大学に進学したとき、それまで少数精鋭だったユースの練習環境から、何百人といる大人数のチーム体制に変わったんです。

頑張る選手がいる一方で、適当にサボる選手もいました。あれだけ頑張っていたのに、僕もそんなサボる選手の集団に流れてしまったんです。

インタビュアー・トモロー

環境の変化が、稲田さんにも変化を与えたんですね。

稲田トレーナー

その時はじめて、僕は精神的に弱いんだと気づきました。その後プロを諦めることになりましたが、今はトレーナーが天職だと思っています。

あのときの挫折が、お客様に接するときのスタンスを作ってくれたのかもしれません。

編集後記

稲田さんは15年ものアスリート生活で、運動の大切さと強いメンタルを作る難しさの両方を学びました。現在、その経験はパーソナルトレーナーとして生かされています。

「私みたいに運動経験のない人が、パーソナルトレーナーを受けてもいいのだろうか?」

こう悩む人ほど、大きな成長の可能性が眠っています。その可能性をつぶさないためにも、稲田さんのようにお客様と向き合ってくれるトレーナーの存在が、必要なのかもしれません。